横振り刺繍

横振り刺繍とは、針が左右に動く横振りミシンを使って図案を見ながら職人の手で直接生地に柄を起こす日本独自の技法で、手振り刺繍とも呼ばれます。横振りミシンは、足元のペダルを踏み込む強さによって刺繍の振り幅が変化します。これを上手く扱うには、長い年の経験と腕が必要です。和装で用いられることが多いのですが、少数ロットの柄や名前などの一点物を縫うときには横振りミシンで縫い上げることがあります。

手で直に縫うので、ジャカード刺繍では必須のパンチカードといわれる型をつくらずに縫えるといった利点がありますが、手刺繍のためにどうしても生産性の面で劣ってしまいます。扱うことができるのは熟練の職人ばかりで若手の職人があまりいないため、若手育成が今後の課題と言えます。また現在稼動できる横振りミシンが少ないのも問題点の一つです。